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古事記
三十九
氏々、高津宮〈○仁徳〉段に、氏々之女等、書紀崇峻巻に、氏々臣連、皇極巻、又孝徳巻に、氏々人等、続紀廿にも、氏々人等、廿五の詔に、諸氏々人等などあり、名々、まづ名は、〈名と雲言の本の意は為(なり)なり、為(なり)とは為(な)りたるさま状お雲、○中略〉もと其人のある状(かたち)〈行状、容貌、由縁、其外くさ〴〵、〉お賛称(ほめたヽへ)て負(つ)けたる物にて、名お呼(いふ)は尊みなり、〈○註略〉さて古は氏々の職業各定まりて、世々相継て仕奉りつれば、其職即其家の名なる故に、〈氏々の職業は、もと其先祖の徳功に因てうけたまはり仕奉るなれば、是も賛たる方にて名なり、〉即其職業お指ても名と雲り、さて其は其家に世々に伝はる故に、其名即又姓の如し、されば名々と雲は職々にて、即此も氏々と雲にひとしきなり、書紀孝徳巻に、詔曰雲々、始王之名々、臣連伴造国造、分其品部別彼名々、復以其民品部、交雑使居国県、逐使父子易姓、兄弟異宗、夫婦更互殊名雲々、また詔曰雲々、天皇名々、或別為臣連之氏、或別為造等之色雲々、各守名々、〈(中略)比に名々とあるは、天皇叉皇子の御名どものことなるお、御名代(みなしろ)なる部々家々に相伝へたるは、其名即姓なり、故夫婦殊名とあるは、姓お異にすと雲むが如し、〉続紀九詔に、其負而可仕奉姓名賜、十八に、逐絶骨名之緒、永為無源之氏、〈これらの名も、即姓お雲り、〉万葉十八〈二十一丁〉に、大夫乃(ますらおの)、伎欲吉彼名乎(きよきそのなお)たヽ、伊爾之弊欲(いにしへよ)、伊即乃乎追通爾(いまのおつヽになが)、奈我佐弊流(ながさへる)雲々、祖名(おやのな)不絶(たヽず)雲々、又〈二十三丁〉毛能乃敷能(ものヽふの)、夜蘇等母能乎毛(やそとものおも)、於能我於弊流(おのがおへる)、於能我名々(おのがなヽ)、負(おひ)、大王乃(おほきみの)、麻(ま)気能麻久(けのまく)〈○久或爾誤〉々々(まく)雲々、可久之許曾(かくしこそ)、都可倍麻都良米(つかへまつらめ)、〈この名(な)々、負(おひ)お、今本に名負々々ご誤れり、〉に、廿〈五十一丁〉に、都加倍(つかへ)久流(くる)、於夜能都加佐等(おやのつかさと)、許等太氐々(ことだてヽ)、佐豆気多麻弊流(さづけたまへる)雲々、安多良之伎(あたらしき)、吉用伎曾乃名曾(きよきそのなぞ)雲々、於夜(おや)乃名多都奈(のなたつな)、〈これら皆、先祖より承嗣来たる、家の職業お名と雲り、〉続紀廿五の詔に、先祖乃大臣止之天、仕奉之位名乎継止念氐〈位名は、位と職となり、〉雲々、先祖乃名乎、興継比呂米武止不念阿流方不在これらお以て、氏々の職おも姓おも名と雲ることお知べし、続紀十七の詔に、進氐波、掛畏天皇大御名乎受賜利、退氐波、婆婆大御祖乃御名乎蒙氐之、食国天下乎婆、撫賜恵賜夫雲々、男能未父名負氐、女波伊婆礼奴物爾阿礼夜、立双仕奉、自理在止雲々、こは天津日嗣所知看御職業お、天皇大御名、〈又婆々は母にて〉後宮の御政お御母の御名ご詔へり、〈次に父名負氐とあるも、父の職業お承継お雲り、〉