[p.0010][p.0011]
姓氏解

日本姓尸
嵯峨天皇の時、中務卿万多等親王、右大臣藤原国人等、新撰姓氏録三十一巻お著り、一千一百八十二氏お載せ、神別皇別諸蕃の三体あり、この氏お拾芥抄には、二十四尸卜無尸とに分ち、かばねお尸といふ、朝臣、真人、宿禰、連、王、公、首、造、直、忌寸、県主、村立、神主、使主、人、伊美吉、史、勝部、氏、伊吉、阿祇奈君、倉人なり、かばねは、華の姓氏の類にあらず、官のすヽむによりて改り、罪あるとき奪れば、爵の類にて、日本のみにてあることなり、しかるに古人、姓の字にて訳しくるあやまりより、姓なりとおもふ人多く、華人までへもそのあやまりお伝へたり、後世にはかばねの論なく、今の衣冠にはただ朝臣のみあり、千百八十二のうぢも遺りたるは、はなばだ希なり、古のうぢお今は或は称号といふ、かばねお姓卜訳すること、もとよりあたらず、尸卜訳するはいよいよ遠し、華になきことなれば、一字にて訳しられず、華語にていはヾ門品なり、