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古史徴
一夏
元生とは諸氏々の生(いで)たる元おいふ、〈○中略〉天神とは、天に生坐る神等おいひ、地祇とは、地に生坐る神等おいふ、其御冑お神別といふ由なり、〈神より別たれば雲るなり〉さて此神別に、また天神天孫地祇の別お立られたり、天神は天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神、津速魂命お始め、其余の天神たちの御裔おいひ、天孫は天照大御神より鵜草葺不合命までの御子孫おいひ、地祇は国に成坐る神たち海神の御未までお雲なり、〈但し遇々には此例お誤られたる事もあり、其は天押穂根命の御裔の弓削氏お左京神別下に地祇に修れ、天道根命の裔たる滋野大村大家などお右京神別下に天孫に修れ、同命の裔伊蘇志臣お大和国神別に天孫に修れ、振魂命の裔たる掃部連お何所も天神に修られたる類も多かり、実は天押穂根命の御裔は天孫に入り、道根命の裔は天神に入り、振魂命は和多都美神の子なれば、其裔は地祇に入るべき物なるおや、なほ此類多ければ、心お著て弁ふべし、〉天皇皇子之派、謂之皇別は、神武天皇より以下、凡て皇子たちの御派お皇別と謂ふ由なり、〈皇より別れたる意なり、釈紀に、私記曰、案王子枝別記去、文武天皇、少名阿琉皇子、天武天皇太子、草壁皇子尊之子也雲々と引り、古くはかヽる記も有けり、〉大漢三韓之族、謂之諸蕃は、大漢の大は尊め称るに非ず、唯三韓に対へて、文字の列お合さむとてなり、〈○註略〉蕃は美夜津(みやつ)古具邇(こくに)と訓て、皇朝の御奴と為(なし)給へる語なり、〈○註略〉さて其蕃国の人どもの族おば話蕃ヾと謂て、神別皇別諸蕃、これお三体と為たる由なり、〈弘仁私記序には、此お四種として、神胤皇裔、指掌灼然、慕化古風、挙目明白といひ、其自註に、中臣朝臣忌部宿禰等為神胤也、息長真人三国真人等為皇裔也、東漢西漢史、及百済氏等為慕化、高麗及東部後部氏等為古風也といへり、〉