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古史徴
一夏
氏は姓氏録に、皇別神別語蕃と別たる如く、元来は氏の貴賤お分別あるお朝廷にして撰び給ひ、さて其人の品に協へて、時々の職々に定おきて、八十伴男お治めしめ給ひ、或は殊更に由縁ありて功しかりし限は、生子の八十連属に其職お知らせ給ふ、神ながらなる御政の式なる、然るお後の御々世々に氏の貴賤の差別なき、賤しき、漢国人の賢だてるお貴べる俗の此方にも漸々に移ろひて、上古の正き御政の御式は沿革(かはり)たるが如くなれど、然すがに其趣はの廃果ずて遺り行術はるヽは、天の下に類なかるべし、抑この人品に貴賤の差別ありて、下の下までも其差別の在がまに〳〵天の下に上なく貴き天皇の御心のまに〳〵、各々等が為には、善くも悪くも伏従ひ奉仕るぞ、道でふ道の大道なれば、下が下まで、此大道お受持て、臣は臣として其君に忠やかなるべきこと、千位万世に動なきぞ浦安国の尊き御国柄なる、漠国の儒道にては君臣有義といふは、其国柄にしては相応べけれど、此方の大道より見れば、甚かたわにぞ見ゆめる、