[p.0035]
多々良問答

一尸(かばね)事
姓氏録に載候分(又拾芥抄第三可考)、其数多候哉、或は断絶し、或世話に称しならはぬも候歟、姓によりて上古以来尸のなきも候哉(あまた候)、近年沙汰し来候、朝臣宿禰連真人(あそんすくねむらじまつと)県主(あがたぬし)など〈王(おほきみ)、公(きみ)、首(おふと)、臣(おん)、造(みやつこ)、直(あたひ)、忌寸(いみき)、村主(すくり)、使主(つかひぬし)、伊美吉(いみき)、史(ふひと)、勝部(かちべ)、氏(うじ)、伊吉、阿祇奈君(あきなぎみ)、倉人(くらひと)、〉の外に、常に何と申尸等候哉、此中に宿禰お初と心得て、除目叙蝕位などに、姓ばかりにて尸おしらぬおば、宿禰と書べしと申、執筆(此儀に候)の習にて候よし、以前被仰聞候き、然者又遠国より昇進輩など、我家の尸おしらずば、何がしの宿禰と可称候、但勅撰などには、四品以後も実名に加へて、宿禰と書候はぬよし(此分候)、先度被仰下候畢、隻書文など書(不審洞院家書体)には、実名に宿禰お書加事、可然候由被仰聞候き、猶巨細被仰出度候、