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氏族考

真人は麻比登と訓て、貴人の意にやあらん、神功紀の歌に宇摩比等破(うまひとは)、〈貴人者なり〉于摩譬苔奴知野(うまひとどちや)〈貴人者共やなり〉伊徒姑幡茂(いとこはも)、〈賤子者なり〉伊徒姑奴池(いとこどち)、〈賤子者なり〉とある宇摩比等は搢紳君子良家などの字お書紀によめるにて、貴人なる事知るべし、皇族は臣属とは異にして、いと高貴なる故、真人と雲り、〈于摩比等の于お省きて雲る也、一説に天皇お現神といへるに対へて、真人と雲りとあるは、さも聞ゆれど、猶貴人なるべく思はる、又賓の義にて、まれひとお、まひとと雲は、辞の省けるなり、取賓与天子之義以命之と雲るは、漢めきたる説にて、信がたし、〉真人姓は、是より以前に君と雲ひて、殊に近き皇族なりし也、