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古事記伝

直(あたへ)は書紀に阿多比延(あたひえ)と訓る所ある〈皇極巻に長〈の〉直(あたひえ)とあり〉と、和名抄和泉国和泉郡の郷名に、山直〈也未多倍〉とあるとお合せて阿多閉(あたへ)と訓べし、〈かの阿多比延(あたひえ)の比延(ひえ)お切めて閉(へ)と雲なり、山直は、山の末(ま)に、阿(あ)の韻ある故に、阿(あ)お略(はぶ)きて多閉(たへ)なり、〉名義未だ考得ず、延(え)は兄(え)なるべし、〈直字は借字なり、続紀廿八に、庚午年籍に直の姓に、費の字お書れたりしこともありしよし見ゆ、〉姓氏録に、直者謂君也とあるは、宜女為君治之とある詔に就て註せるなり、此尸も凡て国々の処々にある姓に附たれば、其処の君たる意にてはあるなり、