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古事記伝
三十三
賜姓は賜号(な)とこそあるべけれ、禹豆麻佐は、姓には非ず、此後も姓はなほ秦なるおや、さて此号の意、禹京は、今言にも物お多く積たる貌などお、宇豆高しと雲に合へり、万葉十五に、名爾於布奈流門能宇頭之保爾と雲るも、高き潮ときこゆ、母利と雲るも、盛又森などの意と、同く通ひて聞ゆ、麻佐(○○)は、即百八十種勝部とある勝なるべし、姓氏録諸蕃に勝と雲姓もあり、又上勝、不破勝、茨田勝など、尸にもありて、即秦勝と雲もあり、是らみな加知(かち)と訓は誤にて、麻佐(まさ)と訓べきなり、其は韓国にて一種の号にぞありけむ、其に此方にて勝字お用るは、麻佐流と雲訓お取たる借字なるべし、さて禹豆麻佐に、太秦の字お書は何時(れの)よりのことならむ、