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古事記伝
三十四
藤原は地名なり、大和国高市郡大原村是なりと雲り、さもあるべし、〈大原村今もあり、其あたりに鎌足大臣の旧跡と雲伝へたる処などもあり、〉万葉一に、天皇賜藤原夫人御歌、吾里爾、大雪落有、大原乃、古爾之郷爾、落巻者後、〈天皇は天武天皇なり、藤原夫人は鎌足大臣の御女にて、万葉八に字曰大原大刀自とあり、大原其本郷なり、天皇初此夫人の家に通ひ住賜へりし故に、古にし郷とはよみ給へるなるべし、十一巻の歌にも、大原の古にし里とあり、鎌足大臣の本居、此大原なる故に藤原と雲姓は賜へるなり、されば大原即藤原なること、彼此につきて著也、〉