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難波江

姓氏文字不画一
すべてこと葉かよへば、文字はいづれの文字おかきても、もとより仮字なればよろし、されど古事記には此詞おば此仮字、日本紀には彼詞には彼仮字とやうに、その書毎に、おのづから分別もありげなれど、おのれいまだ一々にはおしきはめず、そも〳〵姓氏などは、彼此自他混同すまじき為に、その名目もあるものならむに、こと葉かよへばとて、いづれの文字書にてもよろしといふべからずとおもへど、それはた、かよはしかけるあり、今そのひとつおいはんに、
続日本紀巻二、〈文武大宝元年〉令僧弁紀還俗、代度一人、賜姓春日倉(○)首名老、授追大壱、
同六、〈元明和銅七年〉授正六位上春日椋(○)首老従五位下、
懐風藻、従五位下常陸介春日蔵(○)老、
倉椋蔵、文字はかはれど、いづれもくらとよむなり、