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南留別志

一四姓といふ事は、天竺にある事なり、源平藤橘お四姓といひたるは、仏法お信ずるあまりに、何事も天竺の事およしと思ひて、それに擬していへるなり、はてはかた田舎の人は、此四つより外は姓はなしと思ひて、外の姓の人も、皆此四つの内にあらためたれば、今はまことに此四つより外はなきやうになりたり、安倍、伴、朝原、丸子、巨勢、高階、春日、滋野、滋岳、笠、苅田、葛城、葛井、御船、当麻、賀茂、家原、御輔、佐伯、都、布瑠、高丘、三原、三善、大原、粟田、田部、島田、田中、高橋、菅野、錦部、豊階、志紀、御室、布勢、秦、槻本、若安、早部、朝野、蕃良、六人部、都努、賀陽、五百木部、安濃、飛鳥戸、川上、石川、鵜養、吉野、猪甘、茨田、手島、坂合、丹羽、稲置、飯高、大坂、五百庵、波多、黒川、長谷部、川辺、蘇我、雀部、治田、桜井、服部、岸田、平群、佐和良、坂本、日下部、阿毘古、春日部、三枝、稲木、土形、大石などの類は、姓なりといふ事は大かたはしらで、四姓の内になりたるおほかるべし、