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岷江入楚
一/桐壺
一源氏の姓 是は嵯峨天皇弘仁五年に、男女の皇子卅余人に、始て源氏の姓おくだされてよりはじまる、其前は源氏の姓はないぞ、其前は皇子も凡人にくだるとては、色々の姓があつたぞ、源の姓が出来てからは、皇子の前の姓になる事は又ないぞ、それによつて帝王の御子の臣下にくだるおば、一世の源氏(○○○○○)と雲、親王宣下あれば親王なり、臣下になる時の事なり、又親王の子の臣下になるお二世の源氏(○○○○○)といふ、天子御孫なり、嵯峨天皇より後は、別の姓に成給はぬゆえに、天子の子又孫おば、みな源氏と雲ぞ、但近代は、天子のまごひこも、御猶子にて親王に成給ふ事あり、天子の彦其子までも、三世の源氏(○○○○○)、四世の源氏(○○○○○)とも雲べきぞ、