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古事記伝
三十五
大かた名と雲物は、貴きも賤きも、皆其人お美称(ほめたヽ)辞へたる方にて、名お呼は、其人お敬ひ賞(めづ)る意なり、然るお後世になりては、人名お呼お無礼として、諱憚ることヽなれるは、漢国の俗にならへるものなり、古の御世々々に、御名代お定置れしは、右に引る書紀の巻々にも見えたる如く、其御名お物に因せて、後世に広くのこし賜はむとての御所為(みしわざ)なるお、此孝徳天皇の御世に.其御名お軽々しく呼ことお可畏(かしこ)として是お罷られしは、漢意にして、古の御意とは反(うらうへ)なり、