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大勢三転考

抑昔天皇は、御名の絶なんことお悲しみ思ほして、御名代お置賜へるなれば、其御名の人民は更なり、山野に掛ても、万代に伝はりゆかん事ぞ大御心なりけんお、今〈○大化二年詔〉はそお畏しとして、廃止賜へるは、あはれ移れる代の状ならずや、〈○中略〉しはあれど、こヽの革政は、全く御名の上によりし事にはあらず、畢竟は加婆禰の旧弊お砕きて、新令の制度お行はん為の事なるお、此御名は畏くも天皇皇子の御上なれば、是お畏しとしてさし置れんには、こたびの御政行はるべからず、かヽればかく詔りありて、此古ぶりお破り賜へるは、大英断の御事としるべきものぞ、