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古史徴
一夏
古老口実伝、永正記などに、神宮法不知姓職掌、号秦氏例也、其儀相協本記と見えたり、此事余の重き書にも有しと覚ゆるお、今頓に其書お恩ひ出ず、然れど今も此例なりと聞ゆれば、いと正しき説なり、其儀相協本記といへるは、大同本記なるべく所思(おぼ)ゆれど、今伝はらざれば、其本文は知べき由なし、されど異国より投化(まつろひ)参れる人おば、神宮に奉らるヽ例にて、此は秦人お奉れるが始なりしと所思(おぼ)ゆれば、此縁に本づき、かつ姓のいまだ知られざるは、若くは諸藩の族ならむかと嫌疑(うたが)ひて、まづ秦と雲て、皇別神別の貴族に混(まが)はざらしめんと為たると通えて、古意に協ひて所思(おぼ)ゆるお、此はなほ能考ふべし、