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古史徴
一夏
古く蕃人等の投化(まつろ)ひ奉れる状お見るに、己が国には住わびて、身お安くせむの心より、種々貢物など 〓来りて、大御心お取り奉り、さて多くは其国の聞え高き酋長等の名おいひて、某帝の子ぞ、某王の孫ぞなど名称(なの)り来りしお、〈投化の蕃人等が、漢国の帝王の子孫と称て来れるが多かる事は、疑なきにあらず、○中略〉世人の然しも敬ふともなく、其蕃人なる事お卑しめつと見えて、後には悉御国風の姓氏お賜はらむ事お請奏しけること、御紀に多く見えたるが如し、〈○註略〉かくて後には、弥益々にその蕃種なる事お恥けると聞えて、本祖お偽りて、日本之神胤と称ふ事さへぞ起りける、