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太平記

長崎次郎高重最、後合戦事
長崎も、よき敵ならば組んと懸合て是お見るに、横山太郎重真也、さてはあらぬ敵ぞと思ければ、重真お弓手に相受け、甲の鉢お菱縫の板まで破著たりければ、重真二つに成て失にけり、〈○中略〉同国〈○武蔵〉の住人庄三郎為久、是お見て、よき敵也と思ければ、続て是に組んとす、大手おはたげて馳懸る、長崎遥に見て、から〳〵打笑て、党の者共に組むべくは、横山おも何かは嫌ふべき、合はぬ敵お失ふさま、いで〳〵己に知せんとて、〈○下略〉