[p.0301]
苗字は姓氏の類なり、中古以降、居住の地、又は所領等お以て、姓氏の外に之お称せしに萌し、終に平常姓氏お称せずして、専ら之おのみ用いるに至れり、然れども其間には、苗字お称せずして、仍ほ姓氏お以て称せし者もなきにあらず、而して苗字の種類お挙ぐれば.官職地名動植物の名お以てする等、率ね姓氏に同じ、後世に至り、卑賤の者おして苗字お称するお得ざらしめしは、上古奴婢の制の遺れるなるべし、姓氏には二字三字なるお截ちて、一字と為すあり、或は其偏傍お除くあり、此例苗字にも亦これあり、要するに支那の風に効ひて、雅馴お求むるに外ならず、今修姓の条下に、姓氏と苗字とお並べ挙げたり、