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貞丈雑記
四/役名
古も中間は、苗氏おなのらざりし也、武雑書札に、天文二年七月六日の首注文お記したるに、〈中間〉彦六と有て苗氏なし、其外侍には苗氏お書たり、
○按ずるに、上古に於ては、東大寺奴婢籍帳に、奴人足、又は婢飯虫咩と見えたる如く、賤民は姓氏お称せざりしなり、而して中古の書に、卑賤の者の名のみ挙げて苗氏お記せざる者往々あり、苗氏あれども録せざるか、又は素より是なかりしか詳ならず、