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皇都午睡
三編上
江戸にて、〈○中略〉御公儀へ差上る諸書付人別帳にも、何町何兵衛支配借屋何屋何兵衛などヽ、上方の如く家号おしるさず、唯何丁何兵衛店何兵衛と計りにて、筆数のすくなきお是とす、苗字お唱ふる町人も多くあれど、公儀へは通らず、よく〳〵由緒ある家ならでは、苗字お呼ことなし、夫故家名やら、苗字やら、通名やらわからぬ面白き呼名まヽあり、上方の料理屋の通名の如し、必竟は上へ通らぬことゆえ、出たらめの付次第なるべし、