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温知柳営秘鑑

本阿弥家の事
本阿弥家の元祖、妙本と雲者也、本姓菅原氏也、松田お以名字とす、相州鎌倉に居住し、天性刀剣お上る術お得たり、足利将軍尊氏命に依て、京師に来る、鎌倉の松葉け谷日静上人は、尊氏の叔父也是へ帰して法名お授られ、妙本阿弥と号す、是に依て、本光此業お用る、文明年中赤松氏有故に付て、将軍義教大に怒り、此ときに本阿弥清.信お獄舎に入、時に日親上人と獄屋に入、互に獄舎の内にて被説し日親上人の説法に帰依し、其後二人ともに獄舎お出る、清信入道して、日親上人に法名お得て、本光と号す、元祖妙本此本光、何れも、本字お付て、刀業に秀たる故に、松田と不号して、以来本阿弥氏と称により、これより光の字お以て一族の冠字とす、今の三郎兵衛家也、