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鳩巣小説

先日深見新右衛門、故主薩摩の大守の家来、郭氏家譜、伝来候へども、読不申候間、和点いたし呉候やうに申来り候処、新右衛門老人、目などあしく候間、私点附呉候へと、無余儀頼まれ候ゆえ、紙百枚ばかり細真にて書申もの、点いたしつかはし申候、めづらしき家譜にて候、唐郭子儀の家譜にて候、郭子儀は、汾陽王に封ぜられ候て、郭汾陽とて汾陽王子孫、薩摩へ参候て、隻今薩摩殿家来に、汾陽庄右衛門と申もの嫡流にて候、汾陽と書候て、かはみなみと読申よし、珍らんき苗字にて候、御聞なしおかるべく候、