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藩翰譜
九下/毛利
伊勢守藤原高政は、豊臣太閤の家人なり、初め森勘八郎とぞ申ける、太閤未だ筑前守にて、毛利右馬守輝元と戦ひ、天文十年六月、羽柴毛利中直りしで、互に人質お取替さる、毛利は叔父の藤四郎元綱に、桂民部大輔付て出しければ、秀吉は此高政が兄弟おぞ出されける、〈高政が弟兵橘某と雲〉輝元、高政兄弟に向て、両家の好みお合せたる始に、和君兄弟、我が許に来れるに、和君等が名字と、輝元が名字と、唱ふる所の同きこそ怪しけれ、然るべくは、我が名字まいらせて、和君等と、永く兄弟の契、結ばんと思ふは如何にと雲ひければ、高政兄弟、森と雲ふ文字お改て、毛利とは書きたりけり、