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時文摘紕
今の世の人の複姓お、心にまかせてきり、又宇お于と改め、藤お滕と改め、或は我国に無き司馬諸葛などお、姓とする人もあるは、皆児戯の類にて、其非は論おまたざる事なるお、此俗習元禄享保の頃より始りて、今にては久しくなるまヽに常となりて、比お怪み思ふ人も無く、軽俊の子弟の少し文筆の趣お解したる者どもは、かヽらでは雅ならすと思ふ人さへ多きは、笑ふに堪ぬ事也、