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古史徴
一夏
持統天皇紀に五年八月辛亥、詔十八氏〈○註略〉上進其祖等纂記と見えたる、〈纂記お都岐夫美と訓べし、即いはゆる系図と聞えたり、今本に墓字に誤りて、おきつきぶみと訓るは非なり、今は字も訓も釈紀に拠りて正しつ、さて系図おも此に拠て都岐夫美と訓べし、字書に系者、連也、継也、緒也と見え、また図書者文籍也とも有ればなり、○中略〉釈紀または年中行事秘抄などに引たる、高橋成文と雲物あり、岩鹿六雁命の裔の高橋氏の事お記せる文なるが、甚珍しき事実ども見え、余の書にも氏文てふ事の見えたるお思ふに、古はかヽる文の多かりと聞ゆ、〈○註略〉纂記といふ記の状も、大かた然る状の記にぞ有けむ、大系図の巻首に、新編纂図雲々とある纂図てふ号も、御紀に纂記とあるに効へるならむかし、〈此お以ても書紀の今本どもに、基記とあるは誤なること丙焉(いちじる)し、〉