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平家物語

宮の御さいごの事
足利が其日のしやうぞくには、〈○中略〉大おん声おあげて、むかしてうてき将門お亡ぼして、けんしやうかうぶつて、名お後代にあげたりし、俵藤太ひで郷に十代のこういん、下野国の住人あしかがの太郎としつなが子、又太郎たヾつな、生年十七さいにまかりなる、かやうにむくはんむいなる者の、宮に向参らせて、弓お引矢おはなつ事は、天の恐れすくなからず候へ共、たヾし弓も矢もみやうがの程も平家の御上にこそとヾまり候はめ、三位入道殿〈○源頼政〉の御方に、我と思はん人々は、より合や、げん参せんとて、平等院の門のうちへ責入々々戦けり、