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神皇正統記
応神
異朝の一書の中に、日本は呉の太伯の後なりといふといへり、かへす〴〵あたらぬことなり、むかし日本は三韓と同種なりといふことのありし、かの書お桓武の御代に焼すてられしなり、天地ひらけてのち、素盞烏尊、韓の地にいたりたまひきなどいふ事あれば、かれらの国々も、榊の苗裔ならんこと、あながちくるしみなきにや、それすらむかしよりもちひざることなり、天地神の御末なれば、なにしか代くだれる呉の太伯がのちにはあるべき、三韓震旦に通じてより以来、異国の人、多くこの国に帰化しき、秦の末、漢の末、高麗百済の種、それならぬ蕃人の子孫も来りて、神皇の御末と混乱せしによりて、姓氏録と雲ふ文おも作られき、それも人民にとりての事なるべし、異朝にも人の心まち〳〵なれば、異学の輩の雲ひ出だせる事か、