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塩尻

譜牒の重ずべき事 譜牒の重ずべき事、何士普が家規に詳なり、異邦に、清明〈三月節句〉其祖お祭る時、本家支流皆会し、各帯する所の系図お出して其族長に見せしむ、若収蔵疎にして、物に穢し、文字お廃毀する事あれば、懲誡して改めしむ、又不肖の輩、己が家系お他に売、或は自ら贋りて、庶お以て嫡子とし、支流お紊乱するものあれば、下臣に告て刑に処と見へたり、げにも家譜は、其氏姓本源お記し、祖父の実事お編し、後世の証とするものなれば、家々重貴とすべき事なり、故に我国古へ、勅して諸家の譜牒お召て、是お治部省に覈さしめ、中務省に呈し、図書寮に蔵しむ、家にも亦是お記して蔵め、子孫に伝へし、氏上〈嫡家〉支庶おすべて、各其家お保しめ高卑紊れざらしむ、戦国に及んで、本支の分お失ひしより、妄作のもの多く、あらぬ人の裔など書間々あり、