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保元物語

左府御最後附大相国御歎事
左大臣殿〈○藤原頼長〉失せ給ひて後は、職事弁官も故実お失ひ、帝闕も仙洞も、朝儀廃れなんとす、世以て惜み奉る、誠に累代摂禄の家(○○○○)に生て、万機内覧の宣旨お蒙、器量人に超、才芸世に聞へ給ひしが、如何有けん、氏長者たりながら、神事疎にして威勢お募れば、我不朋由、春日大明神の御託宣有、神慮の末こそ恐しけれ、此左府未弱冠の御時、仙洞にて通憲入道と御物語の次に、入道、摂家(○○)の御身は、朝家の御鏡にて御坐せば、可有御学文由進め申けり、依之信西お師として読書有て、蛍雪の功おぞ励給ける、