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武徳大成記
二十四
大神君上洛之事
二十二日、〈○慶長十六年正月〉神君〈○徳川家康〉へ勅せられ、曩祖新田養重に鎮守府将軍お贈らる、先考広忠に大納言お贈らる、これよりさき帝〈○後陽成〉密に伝奏広橋大納言藤原兼勝、勧修寺大納言光豊お以て、神君へ詔有けるは、今度太政大臣に任ぜられ、菊桐の紋お賜るべしとありければ、神君辞譲し玉ひけるは、相国は則闕の宮なれば、輒詔に応じ難し、願は曩祖義重と父広忠とに贈官お賜べきや、菊桐は禁中の御紋なり、其上足利家に玉り、代々用い来事久し、今是お賜り足利家に後れ、新田家の栄に非ず、家伝の葵の紋お用て、某に相応也と奏せらる、帝御感ありて則贈官の詔あり、