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太平記
二十五
藤井寺合戦事
京勢由断して、或は物具お解て休息し、或は馬鞍おおろして休める処に、誉田八幡宮の後ろなる山陰に、菊水の旗一流ほの見えて、ひた甲の兵七百余騎、閑々と馬お歩ませて、打寄せたり、すはや敵の寄たるは、馬に鞍おけ、物具せよとひしめき色めく処へ、正行真前に進で喚て懸入る、