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秋斎間語

或人杏葉の紋の事お問ふ、予〈○上田秋成〉答曰、通方卿の飾抄には、杏葉とかヽせ給ひ、惟仲の記には、尭葉と書たり、薮、中園、高丘の三家に付給ふは、俗間に用るめうがに似て、葉中に花蘂数点あり、武門にて鍋島党の紋とする是なり、園家に付給ふはかざり抄のていに似たる歟、元来此紋、杏の葉にてはなし、古来通文といふ物あり、花にては唐花、葉にては此紋なり、たれが著してもくるしからぬ由にて、むだ紋たヾ紋など雲是なり、鎧具足にも、かけ通しの緒お射切られまじきために、金物にて是お作り、緒の覆ひとす、是通用の具足にて、ぼたん、桜、四つ目ゆひ、その外わが家の紋につけても、名はきやうやうと申由申けれぼ、彼人猶と同じ、野宮家の御説も其通りなりと申ぬ、