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明良洪範続
十三
正綱〈○長沢松平〉の家紋は、浮線綾の三蝶の舞て、八重菊お吸ふ形也、然るに伊豆守〈○信綱〉養子の後、右衛門大夫実子出生しける、後年豆州には段々御取立、養家おば右の実子に相続仰付らる、是松平備前守家也、豆州おば別段に成されける故、備前守方は家元なれども、時の勢にて伊豆守総領家の如くに有し故、家人ども、やヽもすれば争ひの事有ける、右に付、豆州の紋所は、三蝶お扇子にかへ、開きたる扇お用ひらる、之は最初扇お開きしより、立身有し故事お含み、養家の三つ蝶に准じ、三つ扇お付られしにや、