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安斎随筆
前編八
一景清家紋 尾張国海東郡馬嶋村明眼院に白山神社あり、社内に古き鎧あり、相伝て悪七兵衛景清が鎧也といふ、其鎧の図お尾張の人持たるお乞て写しぬ、其鎧に車輪の紋の金物あり、其後或人の談しは、信濃国に景清の建立しわりし古寺あり、堂に車輪の紋付たる金ものありといふ、此事寺お見し人に直に聞かず、人伝に聞し事なれば、郡村の名も寺の名も委しく尋られず、詳ならず、されども景清が紋、車輪にである事は、彼鎧の紋に符合せり、