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類聚名物考
武芸四
一引両 ひとつひきれう〈中黒と雲〉 二引両 ふたつひきれう
ひきれうの事、一引両は新田家の紋にて、即ち中黒と雲へり、二引両は足利家の紋にて、その元は幕の紋より出て、中の幅お黒くし、上下白きお新田家に用い、中の幅お白くして、上下黒きお二引両といひ、足利家の紋といへる也、後は衣服の紋に用うる事ともなれり、れうとはその義未詳、竜の象也ともいひ、料の字おも書ども、まづは両字お用い来れり、此外に三浦等は三引も有也、或説にいふ、両家の系譜に雲伝へしは、日月の御紋お朝廷より賜はりしお、日月の古字お用い紋とす、 日字如此、中黒と雲、 如此なるは月の字の形也といへり、今案に、是さる事にもせよ、是は今世衣服の紋といふ事出来し後に、丸の内にさま〴〵形お書なせるに依て、かやうの事も思ひよれるにや、古へ族旗慢幔幕の紋にては、此意かなひ難しといふべし、