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浪華の風
前にいへる豪家の内、旧家と称せる平野屋平兵衛抔、家風も古来よりの風儀お堅く守りて崩さすといふ、主人の傍向にて召仕ふ年若のもの、丁稚と称する分抔、今以て不断に振袖お著せり、予〈○久須美祐雋〉も見及びし事ありしに、木綿ものにて、定紋と思しき紋お染出せり、何となく古風存して、ゆかしく思はる、