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曾我物語

やかたまはりの事
みちにて十郎〈○曾我祐成〉申やう、わどの〈○祐成弟時致〉は、やかたへかへり給ふべし、二人つれては、人もあやしく思ひなん、すけなりばかりゆきで、やかたのあんない見てかへらんとて、たちばかりもたせ、やかた〳〵おめぐらけり、思ひ〳〵のまくのもん(○○○○○)、こヽろ〴〵のやかたのしだひ、なか〳〵ことばもおよばれず、こヽににつもつかうのまく(○○○○○○○○○)うちたるやかたあり、たがまくやらん、これはわれらがいへのもん(○○○○○○○○○)なり、御てきとなりほろびぬ、いとうとなのるものなければ、此まくうつべきものなし、たれなるらんとふしぎにて、たちよりまくのものみより見いれければ、かたきさへもん〈○工藤祐経〉がやかたなり、