[p.0594]
類聚名物考
姓氏八
名字 な あざな
およそ古人の名、今の心よりは、わきまへがたきもの多ければ、よみうる事さへかたきおや、されば宇合お乃支阿比(のきあひ)と訓が如く、舎人親王お伊弊比止(いへひと)と申が如き、みなよくも思はぬ、後世の心より出し僻よみなり、又訓にてのみは訓(よめ)ざるも有、徳足の如きは、止古多利(とこたり)と音訓相交へてよむなら、この類ひは長良冬良の如き、良おば音にいふ、一条禅閤兼良公おば、加禰羅(かねら)と訓(よむ)お、加禰与之(かねよし)ともよむべきよしもいへり、これらよく思ひわきまへでは、僻事のまじれるものなれば、書このむ人は、必おろそかにはすべからぬ事ぞかし、