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韻鏡諸抄大成

勝復之事
先祖より用ひ来りたる字、其人の性にあはざるあり、仮令ば木性の人に、歯音金の文字お父字となす時、名乗の父字より其人の性お克す是凶なり、然ども此文字お父字にせねばならずとあらば、此父字に生ぜらるヽ所の唇音の文字お母字に用れば、母字お父字より生ずるお以て、父字の気、自とよはりて、其人の性お克する事かなはず、其上此母字より其人の性お生ずるなり、是負べき所の者、復て勝と雲お以て、勝復と雲なり、例して雲はヾ、木性の人の名乗に数敷(かずのぶ)と雲が如し、是数の字は歯音にして金なり、此金より性の木お剋す、然ども数の字、先祖よりの通り字なるお以て父字に用ふ、故に母字に敷の水字お用て、父の金気お奪ふなり、是お以て其人の木性お克する事あたはざるなり、