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元服法式
元服次第〈○中略〉
一元服以前は実名(なのり)なし、元服の日、加冠の人の名のり字お申受て、家の通り字ある人は、その通り字と、とり合せて実名おつく也、又主君の御一字お拝領して、名乗る事も有、〈○中略〉
一主君へ御字の儀、願ひ置たらば、主君の御館へ出仕して、御字御腰物等給る也、公方様より御字拝領の事、折紙に被遊候て、御大刀又は御腰物にそへられ候て、御盃頂戴の時に、直に被下候お、一つに取ていたヾき、御字おば左の手に持退出候、御腰物そへられ候事は、まれの儀に候、先御大刀計に候、御腰物そひ候時は、大刀のおびとりの間にとりそへ退出候、
一公方様へ御字申請る事、兼日申上候時、下の字、何と申字と申上、二字ともに御筆お染られ被下候事も有之、隻御一字計御筆お染られ被下候事通法にて候、御字の折紙は引合也、御字お上におき、下の字は、我家々に定る字お付く事勿論也、