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平治物語

牛若奥州下事
遮那王〈○中略〉承安四年三月三日の暁、鞍馬お出て、東路遥に思立、心の程こそ悲けれ、其夜鏡の宿に著、夜更て後、手づから髪取上て、懐より烏帽子取出し、ひたと著て打出給へば、陵助、早御元服候けるや、御名は何にと問奉れば、烏帽子親もなければ、手づから源九郎義経とこそ名乗侍れと答て、打連給て、〈○下略〉