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大友記
石松源五郎名お返事
長尾の城に、秋月人数さし籠ける所に、石松源五郎つめかけ、毎度攻合けるに、一度もおくれお不取、其忠功によつて、まだ郎等なれども、やかたの御前に召出され、隼人になし玉ふ、其後秋月とせめ合けるに、石松隼人と名乗ければ、秋月勢、扠は源五郎は向はざりけるぞ、一当に追散して寄かくる、石松援おせんどヽ戦けれども、敵事ともせず打てかヽれば、石松支へかね引退く、さても石松、今度一戦にうち負し事、隼人に名お替し故なりとて、下されける名戻し、元の源五郎に成にける、かくて重て秋月と戦しに、件の源五郎と名乗て、ついていりければ、秋月勢ふみとめず、忽に敗軍す、されば人に知れたる名おば、替べき事にあらずとこそ皆人雲けり、