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東照宮御実紀附録

小栗又一忠政、はじめ庄次郎といひしが、此戦〈○姉川役〉の時年わづか十六歳なり、敵兵一人御側近く伺よるお見て、御物の信国の鎗取でわたりあふ内に、御勢どもあつまり来て、遂に敵お討とりぬ、君〈○徳川家康〉庄次郎が、年若けれど心きヽたるお賞せられ、今日の功一番鎗にも越たりとて、その鎗お給はりけり、その後も度々の御陣に、一番鎗お入しかば、又一かと仰有て、名お又一と改めしとぞ、又大塚甚三郎某は、敵と鎗お合せしに、己が鎗折ければ、敵の鎗取てその敵突伏しお御覧じ、又ない働お仕たるぞ、又内〳〵と仰有て、是もこれより又内と改称す、大久保荒之助忠直も、敵の鎗取て奮戦せしかば、荒が事お仕たると仰られて、金の御団扇お賜ひしより、荒之助と改称す、