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貞丈雑記
二/人名
一太郎は、総領の子也、次郎は、二男也、三郎は三男也、今の世には、総領の子お何次郎、何三郎と名付、二男三男に何太郎と名付るもあり、あやまり也、
一小太郎の事、源平盛衰記源氏勢揃の条、河越太郎重頼、同小太郎茂房、熊谷次郎直実、子息小次郎直家、又宇治合戦の条、足利太郎俊綱が子に、又太郎忠綱、これらお以考るに、何太郎何次郎となのる人の子おば、小太郎小次郎又太郎など名のりしとぞみゆ、又源氏勢揃条、土肥次郎実平、子息弥太郎遠平とあり、実平は二男なれば次郎といふ、其次郎の総領なれば弥太郎と雲歟、総領家の太郎に対して、弥の字お付たるなるべし、又石橋合戦の条、権頭季定子息荻野五郎季重、同彦太郎、同小太郎とあり、是は本文順お書違たる歟、荻野五郎が子小太郎成べし、小太郎が子彦太郎なるべし、権頭季定が曾孫なる故、彦太郎とはいひしにや、