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源平盛衰記
四十四
大臣殿舎人附女院移吉田並頼朝叙二位事今日車お遣ける牛飼は、木曾〈○源義仲〉が院参の時、車遣て出家したりし弥次郎丸が弟に、小三郎丸と雲童也、西国までは仮男に成て、今度上たりけるが、今一度大臣殿の車おやらんと思ふ志深かりければ、鳥羽にて九郎判官〈○源義経〉の前に進出て申けるは、舎人牛飼とて下臘のはてなれば、心あるべき身にては候はね共、最後の御車お仕ばやと、深く存候、御免有なんやと泣々申ければ、何かは苦かるべきとて免てけり、