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太平記

長崎新左衛門尉意見事附阿新殿事
去年〈○元徳元年〉より佐渡国へ流されておはする資朝卿〈○日野〉お斬奉べしと、其国守護本間山城入道に被下知、此事京都に聞へければ、此資朝子息国光中納言、其比は阿新(くまわか)殿とて、歳十三にておはしけるが、父卿召人に成給しより、仁和寺辺に隠て、居られけるが、父誅せられ給べき由お聞て、今は何事にか命お惜べき、父と共に斬れて冥途族伴おもし、又最後御有様おも見奉べしとて、母に御暇おぞ乞れける、