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今昔物語
二十八
左京大夫附異名語第廿一
今昔村上天皇の御代に、旧宮(ふるきみや)の御子にて、左京の大夫と雲人有けり、長少し細高にて、極くあてやかなる様はしたれども、有様姿なむ鳴呼也ける、頭の鐙頭也ければ、纓は背に不付ずして、離れてなむ被振ける、色は露草の華お塗たる様に青白にて、眼皮は黒くて、鼻鮮に高くて、色少し赤かりけり、唇は薄く色も無くて、咲(えめ)ば歯がちなる者の断(はしヽ)は赤なむ見えける、音は鼻音(はなごえ)にて高かりけり、物雲へば一内響てぞ聞えける、歩びは背お振り尻お振てぞ歩びける、其の人殿上人にて有けるに、責て色の青かりければ、の殿上人、皆此れお青経の君とぞ付けるお咲ひける、