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源平盛衰記
十九
文覚発心附東帰節女事
文覚道心の起お尋れば、女故也けり、文覚が為に、内戚の姨母一人あり、其昔事の縁に附て、奥州衣川に有けるが、帰上て故郷に住、一家の者ども、衣川殿と雲、若く盛ん也し時は、みめ形人に勝れ、心ばへなども優にやさしかりけるが、今は盛過て世中も衰へ、寡にて物さびしき住居也、娘一人あり、名おばあとまとぞ雲ける、去共衣川の子なればとて、異名には袈裟(けさ)と呼、