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秋斎閑語

壺井翁撰述の書に、壺井安〈義智〉著とあり、いかなる書式にや、安お字とはいかヾ、常に安左衛門と名のられし故にや、近代二字の姓お一字に切て書事はまヽあり、是(これ)以姓お私に切はいかヾなれ共、唐人風に一字姓にしたき心より書なるべし、可然事共不覚、いはんや名の字お切は、一向論に及ばず、察するに山崎嘉右衛門、朱熹に習て字似たるゆえか、山崎嘉と書れしに元づいて、安と書れしものか、壺井翁程の達人も、かヽる誤あるにや、