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鈴屋集
五/長歌
天明二年の冬、家のうちに高き屋お造りて、又の年の三月九日の日、友だちおつど へて、はじめて歌の円居しける時によめる、
おとめらが、ま手にまきもつ、さく鈴の、五十鈴のすヾの、鈴の屋は、しこのしきやの、丸木屋の、お屋にはあれど、〈○中略〉
鈴の屋とは、三十六の小鈴お赤き緒にぬきたれて、はしらなどにかけおきて、物むつかし きおり〳〵引なして、それが音おきけば、こヽちもすが〳〵しくおもほゆ、そのすヾの歌 は、
とこのべにわがかけていにしへしぬぶ鈴がねのさや〳〵、かくて此屋の名にもおほ せつかし、